児童ポルノは、子どもの性的虐待の記録です。携帯やインターネットが普及しファイル共有ソフトが急速に発達した今、児童ポルノは、一瞬にして大量にコピーされ、世界中にばら撒かれています。児童ポルノの被害は撮影時に留まりません。ばら撒かれた映像を誰かが持っているかも知れない。見ているかも知れない。被害者は、こうした不安と恐怖に一生苦しめられます。
私たちは、児童ポルノの根絶のために、それぞれの立場で取り組んできました。しかし、日本国内だけをとっても、児童ポルノ事件の検挙数、ホットラインへの通報件数ともに急増を続けています。被害者の低年齢化も進んでいます。
こうした中、インターネット上の児童ポルノへのアクセスを遮断する「ブロッキング」の導入が、民間主導で検討されています。また、政府の犯罪対策閣僚会議の下に置かれた児童ポルノ排除対策ワーキングチームも、総合的な対策を打ち出そうとしています。私たちは、こうした機運を、児童ポルノの深刻化を食い止め、児童ポルノのない世界を実現してゆく分岐点にしなければならないと考えます。
児童ポルノの根絶には、特にインターネットやITに大きな影響力を持つ先進国が協調してリーダーシップを発揮しなければなりません。一つの国の対策の遅れは、その国の子どもたちのみならず、世界の子どもたちを児童ポルノの脅威に晒してしまうのです。
未来を担う大切な子どもたちを児童ポルノの被害から守るため、そして、被害を受けた子どもたちの深刻な現状を一日も早く改善するため、政府が民間セクターとの協調のもと、次のアクションを早急に実施することを求めます。
- 1 「児童ポルノ」−見ない、買わない、持たない、作らせない
- 国民一人ひとりに対し、児童ポルノの深刻さを理解し、児童ポルノを見たり、買ったり、持たないというメッセージを発信することを求めます。特に18歳未満の子どもを持つ保護者や学校関係者に対し、フィルタリングサービスなどを積極的に活用し、子どもたちが児童ポルノを誤って閲覧したり、自らや友人の裸体などをインターネット上に掲載したりすることがないよう注意を促すとともに、子どもたちが、携帯やインターネットの正しい利用方法を学べる機会を積極的に提供するよう求めます。
- 2 ブロッキングの早期実現
- 被害を受けた子どもたちにとって最も必要な支援の一つは、撮影された画像が人目に触れないようにすることです。ブロッキングの実施に向けた民間主導の取り組みを歓迎するとともに、政府に対し、子どもの権利保護の観点から、ブロッキングの導入に必要な支援を行うことを求めます。
- 3 被害を受けた子どもたちの保護や支援の早期確立
- 被害の予防とともに、被害を受けた子どもたちを早急に見つけ出し、子どもたち一人ひとりに応じた適切なケアを行うことができる体制の確立を求めます。
- 4 取締りの強化
- 児童ポルノを根絶するためには、警察が児童ポルノ犯罪を見逃すことなく、徹底して取締まることが不可欠です。特に、インターネットを利用した犯罪は悪質であり、警察による徹底した取締りを求めます。
- 5 法改正の早期実現
- 児童ポルノに対して厳しい規制を行っているG8はじめ他の先進国の現状に照らし合わせると、日本の現状は不十分と言わざるを得ません。「児童買春・児童ポルノ禁止法」の改正が急務であることは明らかです。児童ポルノの根絶を最優先とした法改正が早期に実現されることを求めます。
2010年5月27日
財団法人 日本ユニセフ協会